季節は香る
手を伸ばして空を押し上げるように、『ハナミズキ』の苞が弾けていますね。
線路沿いの空地に車を止めて、ハザードを出しながら恋人を待つ、
なんてことをしなくなって、ずいぶん久しいですが(笑)、
曲のモチーフになるほど、すっかり『花水木』は定着しています。
でも、人気の樹木というならば、やはり桜でしょうね。
もし桜が香ったら、クラクラするほどだろうな、なんて空想したことはありませんか?
実際に香る桜もありますし、桜餅や桜湯も香しいものではありますが、
どちらかといえば、愛でるもの、というほうがマッチするようです。
香る花、といえば。
わたしなら、春の梅、沈丁花にはじまって、藤、ハゴロモジャスミン。
濃厚なクチナシがムンムンと香りだすと、もう夏はすぐそこ。
そして、ようやく暑い夏が去って、秋とともに訪れるのは金木犀。
けれど、札幌で育ったわたしにとって、
こんな春から初夏の時期にかけて、恋しくなる香りといえば、
ライラックの甘い薄紫。
花も小さく愛らしく、白から紫のグラデーションも絵画のようです。
ジョギングコースにライラックを植えているお宅があって、
というより、わざわざそのお宅の前の道をコースに入れて、
横目で花芽をチェックしていたのですが、ついに今年も咲き始めました。
きょろきょろ辺りを見回しつつ、つい顔を寄せてしまいます。
願わくば、東京のこの地にも多くのライラックが育てば、と。
けれど、 どの駅を降りても代わり映えのない駅前が広がるのは味気ないように、
その土地ならではの風景、その土地に根付いた樹木があるほうが、
想い出す楽しみ、訪れる喜びがある、ということかもしれませんね。