ETERNAL-FLAME

~ 寝ても醒めても キャンドルのことばかり ~

世界にたったひとつ


移り気なくせに、本当に好きなものは、変わらない。

たとえば、このマグカップ

そのとき好きだった色で、自分の右手の指の形に合わせて何度も作り直して、

やっと出来上がった、世界にたったひとつ、私だけのマグカップ

 

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・・・考えてみると、あれからもう20年も経っているのです。

でも、ずっと好きな色。

そして、いまでも私の右手にしっくりなじんで、安定の使いやすさ。

なにより、たっぷり大容量が好みなところも、あのころの感覚のままなのです。

 

もちろん、なんどか別のマグに手が伸びることもありましたけれど、

やっぱり元の、この不格好なマグに戻ってしまいます。

そして、何回もの引越しにも耐えたというのに、

ちょっと縁のところを欠いてしまったがために、しばらくしまいこんでいました。

 

派手に割れてしまえば諦めもつくんでしょうけれど、5mmほどの小さな欠け。

まさかプロに修復を依頼するほど、高価なマグカップではありません。

けれど、私にとってはなによりも価値のある相棒ですから、

なんだか、ずっと心のどこかでさみしい感じがしていました。

 

 

このたび、ご縁があって、盛岡市漆器を作っていらっしゃる田代淳先生に、

半年かけて「金継ぎ」を教えていただく幸運に恵まれたんです。

金継ぎとは、漆を使って器の修復をする技法のこと。

仕上げに金粉を蒔いたりするので、そう呼ぶようです。

 

最近では、樹脂などで簡単にくっつけてしまう方法もありますが、

本格的に漆を使って、時間をかけて修復する方法に憧れて、トライしてみました。

先生は、チャーミングな女性でしたが、あくまでも漆にこだわるところが、

私はとても素晴らしいと共感できて、充実した時間を過ごすことができました。

 

で、ひととおり教えていただいたあと、復習をかねて、

先生の懇切丁寧なテキストを参考に、ひとりで修復したのが、このマグなわけです。

しかも、金ではなくシックな感じが好みですから、銀粉で仕上げました。

・・・前よりずっと好きなマグになったことは、言うまでもありませんよね(笑)

 

 

とくべつ、古いものや、アンティークが好きというわけではないのですが、

気に入って使っているせいで欠けた白磁の大皿とか、

祖母の遺した急須や湯飲みの蓋の欠けとか、

高価ではなくても、大切なものがまた使えるようになるのは、とても嬉しいことです。 

 

形あるものはいつか壊れてしまうけれど、

直したあとのほうが、かえって素敵な景色になったりすることもあるし、

次になにか新調するときにも、臆せず手を出せるようになったりもして・・・

金継ぎは、そんな気持ちになれる、素敵な魔法でもありました。