ETERNAL-FLAME

~ 寝ても醒めても キャンドルのことばかり ~

お見通し

 

はぁぁぁ、と頭を抱えてしまったことがありました。

なにげなくテレビを観ているときに。

クイズ番組で「流れに掉さす」という言葉が出題され、

久しぶりに「情に掉させば流される」という言葉を聞いたのです。

 

有名な、夏目漱石の『草枕』の冒頭部分ですね。

高校の現代文のテーマが『三四郎』研究だったこともあって、

10代のころ、やけに漱石を読んでいた時期がありまして、

でも、もうすっかり忘れていました。

 

ちなみに、「情に棹させば」というのは、「流れに掉さす」の比喩でして、

昔の船頭さんは、小舟を操るときに棹を水底にぐっと突きさして、

水面をすべるように進んでますね、よく時代劇なんかで。

それを観ていながら、うっかりわたしは止めるほうだと思ってしまいました(涙)

 

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「智に働けば角が立つ。

 情に掉させば流される。

 意地を通せば窮屈だ。

 兎角に人の世は住みにくい。」

 

なんてことを、山路をのぼりながら主人公は考えるわけです。

明治を代表する作家の考えていることであるからして、

現代に限らず、ながく人の世に伝わる、感慨なのでしょうね。

もっとも10代のわたしにはサッパリわかりませんでした、読みづらいですし(苦笑)

 

で、はぁぁぁ、と唸ってしまったのは、

ここ最近のわたしが、まさに、この文章の通りに動いていたからです。

智に働いて角を立たせ、ついで、情に掉さしてあてもなく流され、

あげく、意地を通して窮屈になって、ここは住みにくい環境だ、などと。

 

そつなくこなす、をモットーにしている(?)わたしでも、

どうにもこなせずに、いくえにも振り回される状況に直面し、

実地に体験してみなければ、何事もわからないものだ、とはいえ、

漱石先生は教えてくださっていたのになぁ、の、はぁぁぁ、なわけです。

 

「人の世は住みにくい」とおっしゃるならば、

どうしたらいいのよぉ、とつい早急に答えを求めたくなってしまうもの。

山路を登るどころか、スマホ片手のわたしにも、

先生は、こんな答えを用意してくださっていました。

 

 「越す事のならぬ世が住みにくければ、

 住みにくい所をどれほどか、寛容げて、

 束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。」

・・・やっぱ、そーですよねぇ、先生。

 

何を隠そう、わたしもようやくその考えに到っていたところでございます。

そろそろ折り返し、というほどに年齢を重ねてみますと、

束の間の命、ということもヒシヒシと感じはじめるものですし、

なにより「住みよく」という感覚こそ、わたしに足りないものでした。

 

智も、無ければ困るとはいえ、持っていても使わないでは意味がありません。

情にしても、無情では切ないし、流されてばかりでは困りもの。

意地にしたって、張らずにすめばいいけれど、

張らねばならない時期だって、残念だけれど、あるものです。

 

きっと、バランス、なんだろうと思うんです。

それもわかっていたんです、頭では。

でも、バランス感覚というのは、たえまなく磨きつづけるセンスなんでしょうし、

磨きつづけてこそ、「住みよ」い暮らしを送ることができるのでしょうね。

 

 

それにしても、この件の最後の教えには、恐れ入ってしまいます(苦笑)

『うまい物も食わねば惜しい。

 少し食えば飽き足らぬ。

 存分食えばあとが不愉快だ。』・・・はぁぁぁ。