直立不動な夜
当日券があるらしい、というタイムリーな情報を得て、
一度は諦めた舞台、NODA・MAPの『MIWA』を観てきました、立ち見で(笑)
つまり、行列も含めると、ほぼ4時間、直立不動。
おかげで、観終わって飲む生ビールの美味しかったこと!
NODA・MAPは、これで2度目。
2009年の『パイパー』も宮沢りえさん目当てで、
あの『おのれナポレオン』の代役を引き受けたきっかけともいわれる舞台。
大好きな松たか子さんとも共鳴していて、感慨深い作品でした。
そして、今回の題材は、あの美輪明宏さん!
シャンソン歌手で、シスターボーイで、黄色い髪形の、あの。
どのように描かれるのか、かなりの話題作でしたから、
発売時には、チケットを押さえることができなかったのでした。
・・・もう、とにかく、りえさんがチャーミング♪
あの怪物とも呼ばれる美輪さんを、時にかわいらしく、時に妖艶に演じ、
軽妙なセリフとコミカルな演技で、ちょこちょこ笑わしてもらいながらも、
波乱に満ちた彼の半生を、夢のように美しく再現していました。
そして、なんといっても素晴らしかったのは、古田新太さん!
奇抜すぎる衣装を堂々と着こなす圧倒的な存在感と、
あらゆるものを超越するかのような、飄々とした雰囲気に、
最初から最後まで、すっかり魅了されてしまいました。
野田さんが新たに描き上げた、伝説。
コミカルなタッチで、一気に巻き込まれてしまいましたが、
「面白かった」と感じる一方で、
じわりじわり、とさまざまな感情が湧いてきています。
たとえば、戦争。
期せずして『風立ちぬ』で、戦争に巻き込まれる悲しみを想い、
この『MIWA』では、戦争の残した爪痕の痛ましさを感じることになりました。
戦争が、ひとりひとりの心に残す、深い闇について。
はじめは、小学校の図書館で漫画と出会い、そして歴史の授業で学び、
本や映画を通して、現地の資料館を訪れて、何度も見聞きしてきた、原爆のこと。
それらの私の記憶すべてが、舞台という特殊装置で一気に噴き出し、
彼もまた、焼け野原を彷徨った少年であったことを、改めて気付かされたのです。
それから、マイノリティの問題。
生きたいように生きることが難しかった時代に、
それでも、生きたいように生きていくことの、勇敢なさま。
そして、平和になってもなお、生きたいように生きることは困難だということも。
美しい少年を、りえさんが演じることに、野田さんの意図があり、
違和感を感じないような設定が、すでにトリックであること。
愛する、という感情がどれほど純粋であっても、
マイノリティであるが故のジレンマが、じわりと胸に迫り、ギリギリと痛むのです。
とはいえ、舞台自体は、とっても面白かったです♪
贅沢な役者陣、ついネタバレしてしまいたくなるほど斬新なアイデア。
東京は今週末までですから、結末を知っていても、もう一度観たいくらい。
うっかり、また当日券の列に並んでしまうかもしれません(笑)