ETERNAL-FLAME

~ 寝ても醒めても キャンドルのことばかり ~

果報は寝ながら

 

輪島へ、というアプローチがあったとき、

たしか同じ石川県じゃなかったかな、と思い出して、

ついに、とある摘草料理で名高いお宿を訪れることができたのでした。

おそらく10年越しくらいの、念願のお宿。

 

夏のあいだの小休止「夏眠」に、そっと寄り添ってくれていたのは、

私の大好きな平松洋子さんの文章たちでした。

文字通り、寝ながら、でも、遠くへ近くへ旅するような世界観。

疲れていた心と身体が、とても解放される時間となっていたようです。

 

そして、そのお宿は、平松さんの本のなかで紹介されていて、

その精密な筆致で繰り広げられる山あいの道程もふくめて、

長く憧れ、けれどその遠方具合に、なかば諦めてもいたのでした。

果報は寝て待て、とは言いますが、こういうとき本当に果報者だと感じます。

  

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平松さんの文章との最初の出会いは、

20年近く前に雑誌に掲載された「ままごと屋」の探訪記。

澤乃井で有名な東京・青梅市の小澤酒造が展開する豆腐料理屋で、

その何年か後に訪れ、感激した覚えがあります。

 

本腰を据えて手に取るようになったのは、

独立して自分でキッチンを采配することになったとき。

初めのころはそれでも楽しくキッチンに立っていたのですが、

一通りの献立を試し終えると、その後の途方もなさに呆然としたのです。

 

いつか食べなくなる日まで、延々と続く、おさんどん。

けれど、食べるものだけで出来ていく身体、その重圧と責任感。

圧倒的な心細さに、すがるような気持ちで改めて手に取り、

暮らしに対する基本の心構えから、教えを乞うような心持ちでした。

 

近ごろでは、そのようなシリアスな段階も通り過ぎ、

ハレとケ、非日常と日常、を使い分ける楽しさを教わっています。

すると、過去に読んだものも、改めて何度も読み返しても、

新しい発見があるもので、その奥深さに驚くほどです。

 

この夏、手に取った平松さん関連の本、実に、25冊!!

そのような、ある意味で充実した夏を過ごしていると、

「・・・お腹、すいた」と口をついて出てきてしまうほど。

平松さんの本は、とにかくお腹がすくほど美味しそうなのです(笑)

 

『忙しい日でも、おなかは空く。』という本を書かれているように、

「食べる」ことは、まさに「今を生きる」ことであったなぁ、と、

改めて、深く考えたりしています。

そして、それこそは、私にとって大いなる喜びです。

 

 

で、冒頭の摘草料理のお宿、素晴らしいひとときでした。

なぜその場所なのか、なぜ1組限定なのか、ということが納得の、

細部まで心の行き届いたお料理の数々であり、

お部屋のしつらいであり、つまりは、おもてなしでありました。

 

身体や心が健やかでありたい、と願うときに、そっと寄り添うようなお宿。

山菜も美味しいとのこと、春の訪れとともに再訪するつもりですが、

どちらのお宿かは、どうぞ平松さんの文章をお読みになり、

遠くへ近くへ、旅をするような気持ちを味わいつつ発見していただけたらと思います♪