Life goes on and on...
ふと、歯が痛い、と唐突に気付きました。
歯、というか、顎全体が痛いような。
ああ、そうか、まただ、
また歯をくいしばっていたんだ、と思い当たりました。
先週、年上の友人が旅立ってしまいました。
あまりに突然のことで、信じたくない気持ちがあるのです。
きちんとお別れしたはずなのに、
その角を曲がったら会えるんじゃないか、とか。
あるいは、わたしが泣いたりしていると、
彼が見たら、きっと困った顔をするだろうなと思えて、
ずっとずっと、歯をくいしばって、
涙や、悲しみや、言葉や、想いをこらえていたようでした。
もちろん、泣いてもいいんですけれど、
どうしたって涙はこぼれてくるのですけれど、
泣いてしまったら本当のことになるような、そんな気がして。
受け入れたくない、というだけのことなんです。
最後に会ったのは、いつだったろうか。
最後に飲んだのは、いつだったろうか。
そのとき、私たちはうまく笑いあえていただろうか。
それぞれに苦しいときを、うまく笑い飛ばしあえていただろうか。
しばらくぶりの写真の彼は、どういうわけかとても若くて、
はじめて会ったころ、ちょうど、いまのわたしと同じ年くらい。
だからこそ、余計に悲しみが募るのかもしれません。
若いころには想像もしなかった、それぞれの道のりの苦しさを想って。
あれから毎晩のように献杯、でも、ちっとも酔えないんです。
また昔みたいに、夜な夜な飲みに出歩く生き方もいいかな、なんて、
ようやく思えるほどに、元気になってきた矢先だったのに、
もうどの店のドアを開けたとしても、彼と飲めないなんて。
本当に、深くて素敵な声の人でした。
もうあの声で、わたしの名前を呼んでもらえないのかと思うと、
胸が塞がれるような苦しい気持ちになります。
でも、もちろん忘れるはずもない、あの素敵な深い声。
彼のために、と、
あれから灯しているキャンドルも、すこしずつ形を変えていきます。
少なくとも、苦しみからは自由になれたはずの彼の不在を、
このキャンドルが尽きるころには、きちんと受け入れようと思います。